研究内容

超新星ニュートリノ

太陽の8倍以上の質量をもつ恒星はその進化の最後に重力崩壊に至り、超新星爆発を引き起こします。 その際には恒星の全エネルギーの99%に相当するニュートリノが中心から放出されます。 このニュートリノはただ中心から逃げるだけではなくニュートリノ加熱機構として衝撃波が星表面まで辿り着くのを助け、またニュートリノを介した元素合成を引き起こすなど様々な現象に関わっています。 星の内部で起きている現象は光を用いて見ることができないため、ニュートリノは重力波と並んで重要な観測道具になると考えられています。 例えばニュートリノは超新星中心部の温度や密度に依存した形で放出されるため、観測されたニュートリノのエネルギー分布を見ることによってその内部情報を知ることができるのです。

一方でニュートリノはニュートリノ振動として、移動するだけで勝手にそのフレーバーが混ざる現象が起きます。 この現象により地球に到達したニュートリノはフレーバー状態が生成時と比べて変化しているため、本来知りたかった超新星内側の情報が失われる問題が発生します。 そのため観測で得られたデータから正確に情報を引き抜くためにはこのニュートリノ振動機構を把握することが重要となります。


ニュートリノ集団振動

超新星爆発においてニュートリノ振動は大きく分けて3種類(真空振動・物質振動・集団振動)存在しています。 そのうち集団振動は超新星爆発や中性子星合体などのニュートリノが大量に放出されるイベント特有の振動効果であり、ニュートリノ同士が相互作用することによって引き起こされます。 集団振動が起こる範囲が超新星内部10kmから1000km程度と大きなスケールであるのに対し、フレーバーが入れ替わる振動波長がcmのスケールと非常に短いものであるため星の進化計算と同時に取り扱うことは非常に困難なものとなります。 したがって、その振る舞いを正確に知るためにはスーパーコンピューターなどを用いた大規模な数値計算を行う必要があります。 近年はこのニュートリノ振動が衝撃波より内側で発生する可能性が示唆されており、その場合にはニュートリノ加熱効率に影響を与えます。 そのため超新星爆発において、いつ・どこで・どれくらいのニュートリノのフレーバーが存在しているかを把握することは天体物理的にも重要な課題となります。 このように集団振動が超新星爆発に様々な影響を与える可能性が多くの論文によって議論されており、現在非常に活発な研究分野となっています。